政治・経済 メモ代わりに

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『我、自衛隊を愛す故に、憲法9条を守る』

『我、自衛隊を愛す故に、憲法9条を守る』2003年12月、小泉純一郎首相(当時)の「独断専行」で自衛隊が戦乱のイラクに派兵されました。この明白な憲法・自衛隊法違反行為に対して非常な危機感を抱いた北海道小樽市在住の80歳男性がいました。本書著者の1人である故・箕輪登氏です。

箕輪登氏は自《みずか》ら札幌弁護士会を訪れ「自衛隊イラク派兵を中止させる訴訟をおこしたいので協力をしてほしい」と申し入れました。箕輪氏の要請に応じて100人以上の北海道在住弁護士が訴訟への協力をすることになり、2004年01月28日、札幌地裁に「自衛隊イラク派兵差止訴訟」が提訴されました。

箕輪登氏はどういう人物だったのでしょうか? じつは自民党衆議院議員を23年間にわたって務め、防衛政務次官・衆議院安全保障特別委員長・自民党国防部会副部会長・日本戦略センター理事長を歴任した、周囲の誰からも「タカ派」と評されるような人だったのです。

そのような「タカ派」の箕輪登が「今回の自衛隊イラク派兵は戦争参加そのものであり、憲法・自衛隊法違反だ。自衛隊員が人殺しをすることなく一刻も早く帰宅できるようにしたい」という強い信念のもとに差止訴訟を提起した。誰もが驚くような行動であり、まさしく「義挙」でありました。

残念ながら、箕輪登さんは裁判も中途の2006年05月14日に永眠されました。自衛官たちの帰国を見ることのできなかったのが、さぞかし心残りであっただろうと察せられます。そんな箕輪さんの葬儀の会葬礼状には箕輪さん自身による次のような言葉が書き添えられていました。
何とかこの日本がいつまでも平和であって欲しい
平和的生存権を負った日本の年寄り一人がやがて死んでいくでしょう
やがては死んでいくが死んでもやっぱり日本の国がどうか平和で働き者の国民で幸せに暮らして欲しいなとそれだけが本当に私の願いでした
みのわ登
いまの日本には、自分の身は絶対安全圏に置きつつ口先だけは矢鱈《やたら》に勇ましい、「にせタカ派」とも呼ぶべき人たちが溢れています。生まれながらに特権的な地位を与えられた世襲議員でありながら、ミリタリズム(軍国主義)大好きという「ぼんぼんタカ」にも事欠きません。

はっきり言いましょう。私(喜八)はこういった「チキンホーク(Chicken-hawk)」どもが心の底から大嫌いです。世にも最低の奴らだと軽蔑しきっています。「そんなに戦争がしたいのなら、自分で銃をとって、勝手に殺しあってくれ」と、これは何度でも言いたい。

しかし故・箕輪登氏のような平和を愛する「タカ」、「護憲タカ」には敬意を覚えざえるを得ません。

人々の平和な暮らしを守るためには誰かしらが「タカ」の役目を果たさなければならないのでしょう。「非武装中立」は美しい政治理念ではありますけれど、いつの時代・どこの地域でも成立するというものではありません。いまの日本にはやはり「タカ」が必要だと私は考えます。その「タカ」が憲法を守り平和を守る存在でありさえすればいい。

2004年04月08日、北海道出身のTさんら日本の若者3人がイラク国内で武装抵抗勢力(レジスタンス)によって拉致され人質となりました。小泉首相(当時)を始め日本政府の大勢は「人質見殺し」の方向に傾いていたと私は思います。しかし、箕輪登氏は違いました。3人の若者たちの代わりに自分を人質にしてくれと、中東カタールの衛星TV局アルジャジーラを通じて英文メッセージを送ったのです。

さらには人質たちが救出された後に日本国内で沸き起こった「自己責任バッシング」に対し、箕輪登氏は怒りのコメントを発表しました。以下にその一部を引用します。
 政府や一部報道機関は、人質とされた三名に対して、『自己責任』を強調し、自衛隊派遣の国策を妨害し、政府に要らぬ負担をかけた『非国民』であるかのごとく言っているが、とんでもない話だ。特に北海道出身の二人について言えば、本当の意味での人道支援を実行しようとした勇気ある素晴らしい若者たちである。
 問題は、小泉首相である。自己責任を言うならば、憲法や自衛隊法に違反する派兵をして、自国民を人質に取られるようなことをした政治家の責任こそ問われるべきである。
 国民も、軍隊を国外に出すと結局こうなるということ、自国民の安全や保護よりも国策遂行=軍隊の活動が優先するということを知ったと思う。
 自衛隊は、一刻も早く撤退すべきである。そして、日本国内から二度と出してはならない。
生涯を通じて「平和を守るタカ」であり続けた箕輪登さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。


(『我、自衛隊を愛す故に、憲法9条を守る』かもがわ出版、2007)


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『許される嘘、許されない嘘』

『許される嘘、許されない嘘』浅野史郎許される嘘、許されない嘘』は前宮城県知事・浅野史郎さんの雑誌連載エッセイ「新・言語学序説」をまとめた一冊です(現在も月刊誌『年金時代』で連載中)。

「新・言語学序説」ではまるで学術論文のようではありますが、「これ自体が冗談、お遊びみたいなもの」という気楽なエッセイ集です。テーマは、エルヴィス・プレスリーから警察の犯罪捜査報償費まで、硬軟両翼にわたっています。

浅野史郎さんは私(喜八)から見ると「そつのない秀才」というイメージが強くて、正直なところ「敬して遠ざけたい」印象の方でした。が、今回『許される嘘、許されない嘘』を読んだことで、実際の浅野さんが駄洒落やジョークを頻発する方だということがよく分かりました。かなりのレベルの「目立ちたがり」「出たがり」「おしゃべり」オヤジみたいです(笑)。

そんな浅野さんが「もっとも尊敬する政治家」として、大平正芳元首相の名を挙げているのに注目しました。生前の大平正芳は口下手で、演説や答弁の途中、頻繁に「あー、うー」が入るため「あー、うー総理」「鈍牛」などと呼ばれていた保守政治家です。

けれども大平正芳が緻密な頭脳の持ち主でありユーモアのセンスにも恵まれていたことは今では明らかになっています。また、大平は田中角栄元首相のもっとも信頼した「同志」でもありました。ともに貧しい家に生まれながらも、凄まじい勉強を重ねて道を切り拓いたという来歴を持つことから、お互いに親しみをもっていたようです。

「目立ちたがり」「出たがり」「おしゃべり」の浅野史郎さんが、口下手「鈍牛」の大平正芳元首相を尊敬しているというのは不思議なようではあります。とはいえ「政治家」浅野史郎が何を理想としているのか、本質的にどういう人なのか、想像できるようで大変に興味深いところです。

障害福祉をライフワークとする浅野史郎さんの本らしく『許される嘘、許されない嘘』には感動的なエピソードがいくつも紹介されています。その中で私がもっとも心を打たれたのは、童謡歌手の安田祥子さん・由紀さおりさん姉妹の話でした。

安田祥子さんと由紀さおりさんは、地方でのコンサートが終了するとすぐに大学病院の緩和ケア病棟に赴き、患者さんたちの手を取りながら、伴奏なしで童謡を何曲も歌う。聴いている患者さんのほとんどは数ヵ月後に死期を迎えるような重症の方々です。患者さんのご家族も一緒に涙を浮かべて聴き入っている。こんな「ボランティア」をされています。

コンサートで何曲も歌って疲れきっているはずなのに、どうしてこんな凄いことができるのだろう? それこそ「一文の得」にもならず、自分たちの身体と心への負担は大きいボランティア。思わず唸《うな》ってしまうような見事な振る舞いです。安田祥子さん・由紀さおりさんのことはこれまでも大好きでしたが、改めて「大ファン」と化して、このエピソードを友人知人に広めています。

「本籍地は福祉」と宣言し、「福祉」は可哀想な人たちをいたわることではなくて、人間中心の社会を築いていくことだと考える。そんな浅野史郎さんの「哲学」が伝わってくるエッセイ集でした。


(『許される嘘、許されない嘘』浅野史郎、講談社、2007)


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『武装解除』 伊勢崎賢治

『武装解除』伊勢崎賢治国連PKOの一員として東チモールシエラレオネアフガニスタンで紛争処理(軍閥・ゲリラの武装解除、戦後のインフラ構築など)にあたった経験をもつ伊勢崎賢治東京外国語大大学院教授の著書『武装解除』よりの引用です(214-216頁)。
「金だけで血を流さない」とは、日本のタカ派政治家が、「だから日本の貢献は評価されていない」、「だから日本はバカにされている」と、日本の自衛力を海外派兵する口実に、頻繁に用いてきた。 僕は、仕事柄、米連合軍の司令官クラス(少将、中将のレベル)と日常的なやり取りがあったが、「彼らは日本の資金的貢献をしっかり評価している」というのが実感である。これは決して僕に対する彼らの外交辞令ではない。そんなことを僕のような下っぱにやっても、相手にとってまったく利益がない。日本の貢献を直接的に利用する相手側の軍のトップ連中の本音なのである。
 つまり、相手はちゃんと評価しているのに、評価していないと、その相手がいない日本国内で、日本の政治家たちは騒ぎ立ててきたのだ。
 本来、国際協力の世界では、金を出す者が一番偉いのだ。
 それも、「お前の戦争に金だけは恵んでやるから、これだけはするな。それが守れない限り金はやらない」という姿勢を貫く時、金を出す者が一番強いのだ。
 しかし、日本はこれをやらなかった。「血を流さない」ことの引け目を、ことさら国内だけで喧伝し、自衛隊を派兵する口実に使ってきた。
 ここに、純粋な国際貢献とは別の政治的意図が見え隠れするのを感じるのだ。
 右翼化。
 つまり民族の自尊心を、国外に対する武力行使、もしくは武力誇示で満足させようという動きが日本にあるとしたら、そして、日本の軍備を紛争当事者国の庶民の安全保障以外の目的に悪用する可能性があるとしたら、僕は愛国者として体を張ってそれを阻止したいと思っている。
紛争屋」として、現実の戦争・内乱・虐殺行為を目の当たりにしてきた著者伊勢崎賢治さんならではの渾身の1冊でした。「人間による人間の虐殺」を根絶したいと願うすべての人にとって『武装解除』は必読の書だと思います。ぜひ手にとってみてください。


(『武装解除』伊勢崎賢治、講談社現代新書、2004)


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『自壊する帝国』佐藤優

『自壊する帝国』佐藤優、新潮社自壊する帝国』は起訴休職中の外務事務官佐藤優さんによる最新刊(2006年05月30日発行)です。2005年03月に上梓されベストセラーとなった『国家の罠』の続編にあたります。読後感は「外交官佐藤優の青春記」、あるいは「不思議な友情の物語」でした。

佐藤優さんは1985年04月外務省に入省。欧亜局ソビエト連邦課に配属され、ロンドン郊外の英国陸軍語学学校でロシア語を学んだ後、モスクワ国立大学言語学部に留学。2年間の研修期間を終えてからは在モスクワ日本大使館に配属されました。そして1991年のソ連崩壊を内部から観察し続けました。

本書にはすこぶる魅力的な「怪人物」が次々と登場します。アレクセイ・ニコラエビッチ・イリイン旧ロシア共産党第二書記、「ソ連維持運動の中心的人物ビクトル・アルクスニス空軍大佐、ロンドンで古本屋「インタープレス」を経営する亡命チェコ人ズデニェク・マストニーク、怪僧ビャチェスラフ・セルゲービッチ・ポローシン、佐藤さんが「私の人生を一変させた人物」と呼ぶアレクサンドル・カザコフ・・・。

佐藤優さんは外交官の職務として、日本の「国益」を追求するため、上記「怪人物」たちと親交を深めていきます。とはいえ、そこには単なる方便だけでなく、たしかに友情が存在するようなのです。国籍も思想も異なる男たちの心を打つ「なにか」が佐藤氏の内に存在するのでしょう。

佐藤さんが「私が親しくした数多くのロシア人政治家のなかでも、最も印象に残る人物の一人」とするイリイン旧ロシア共産党第二書記。彼は1991年08月19〜21日の「クーデター未遂事件(ゴルバチョフ大統領が守旧派により軟禁され、一時は死亡説も流れた)」の際、「ゴルバチョフ生存」等の重要情報を「西側の」「下っ端の外交官」佐藤優氏に流してくれた人物です。イリインはその理由を次のように語ります。
理由だって。サトウ、わかるかなぁ、人間は生き死ににかかわる状況になると誰かにほんとうのことを伝えておきたくなるんだよ。真実を伝えたいという欲望なんだ。子供を作りたいという気持ちに似ている
 (中略)
マルクス・レーニン主義でもキリスト教でも、あるいは愛国思想でも、信奉しているイデオロギーは何でもいいんだが、信念をたいせつにする人と信念を方便として使う人がいる。君は信念をたいせつにする人だからだ。周囲に他にそういう人が見あたらなかった。
イリインは「自らのためには頭を下げない」、つまりクーデター失敗後もエリツィンらに命乞いをすることをよしとしなかった硬骨漢でしたが、「部下のためならばいくらでも頭を下げ、再就職を頼み込」みました。そのようにモラルの高いイリインも、ソ連崩壊後はウオトカに依存するようになり、1997年に心臓麻痺で死亡したそうです。

このエントリーの冒頭で述べたように『自壊する帝国』は「外交官佐藤優の青春記」「不思議な友情の物語」として読むことができます。けれども本書は単なる回想録ではありません。著者の佐藤優さんには現在の日本が自壊しつつあるのではないかという非常に強い危機感があります。
おそらく日本人の大部分は、日本が崩壊するはずはないと思っているだろうが、国家というのはある日、突然に崩壊することもあるのだ。
佐藤優さんのこの危機感を私(喜八)も共有します。今後、日本という国が存続するできるかどうか、けっして楽観はできないと思っています。長期にわたる経済の停滞、膨れ上がる一方の財政赤字、急速に進行する「少子高齢化」、60年以上にもおよぶ「在日米軍」の駐留、そのアメリカの常軌を逸した世界戦略、隣国中国の大国化・・・。

自壊する帝国』ほかの佐藤さんの一連の著書は、日本国とそこに暮らす我々(日本人および永住外国人)が、困難な状況の中で「サバイバル」していくための「最良の実用書」であると私は考えています。


(『自壊する帝国』佐藤優、新潮社、2006)


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『アメリカの日本改造計画』関岡英之・編

『アメリカの日本改造計画』関岡英之編ノンフィクション作家関岡英之さん編集の『アメリカの日本改造計画』に佐藤優起訴休職外務事務官と関岡英之氏の対談が掲載されています(同書32-60頁)。この対談から佐藤優氏の発言を以下に引用します。

まずは佐藤氏が「「親米保守」という概念が日本で成り立つかどうか」と提起して自らその設問に答えている部分です(同書36-38頁、引用文中「」は佐藤優氏)。
結論から言いますと、私は親米保守という考え方は、非常に特殊な事情のもとにおいてしか成り立たないと思います。それは東西冷戦です。冷戦期には旧ソビエト連邦という現実的脅威が存在した。その後、時代が根本的に変化したにもかかわらず、いまだに日本は冷戦時代の思考法で動いています。
次は「「親米保守」の自己矛盾」という小見出しの後の考察(38頁)。
 冷戦期には、ソ連や中国の共産主義が日本に浸透し、日本の国体を破壊するかもしれないという現実の脅威がありました。共産主義はイデオロギーですから、対抗イデオロギーとしての反共主義があります。その反共主義を担保していたのがアメリカの存在です。この回りくどいメカニズムを前提としたうえで初めて「共産主義の脅威があるのだから、反共主義の中心であるアメリカと手を握る」というロジックで「親米保守」が成り立ちうるわけです。
そして部分的な結論(39頁)。
 日本の保守なら、本来「親日保守」でなければならない。アメリカにおける保守なら、親米保守しかありえないんです。同様に、中国では親中保守、ロシアでは親露保守。
「まったくその通り!」と叫びたくなるような論理展開ですね。
さすがはラスプーチン佐藤優!

ところが、日本には「とにかくアメリカ様にひたすら従っていれば間違いなし」とでも言いた気な「親米保守」が溢れ返ってます。「米国が一番、日本は二番」保守とでも呼べばいいでしょうか(言うまでもなく「蔑称」です)。彼ら彼女らが本物の「愛国者」であるとはどうしても思えない。

もちろん本物の愛国者である「親日保守」日本人も存在します。しかし、どうも「親日保守」は主流に成りえていないような気がする。それどころか「冷や飯を喰わされている」のが実情ではないでしょうか。そして「米国が一番、日本は二番」保守がやたらに幅を利かせている。なんともねじれ切っているのが我が祖国日本の現状ではないか(とほほ)。

佐藤優氏と関岡英之氏の対談は内容がみっしり詰まっている上にボリュームもたっぷりですから、ぜひとも『アメリカの日本改造計画』を手にとって読んでみてください。そのほか本書には以下のようなコンテンツが含まれており、なんともお買い得な一冊となっています。

ただし、謎の憂国者「」さんも以前おっしゃっていたように『アメリカの日本改造計画』には「一部に左派系思想の方々にとってアレルゲンとなる文章も含まれて居ますr のお勧め書籍)」。そこのところは「人生いろいろ。意見もいろいろ」と大らかに受け止めるのが cool な大人のやり方かと(笑)。「右」も「左」もノンポリも共存できるのが健康な社会というものでしょう。仮に「100%右」あるいは「100%左」なんて国があったら、おっかな過ぎます。


(『アメリカの日本改造計画』関岡英之編、イースト・プレス、2006)


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『六千人の命のビザ』

『六千人の命のビザ』杉原幸子亡命ユダヤ人に「六千人の命のビザ」を発行した杉原千畝(すぎはら・ちうね、1990-1986)は日本の外交官です。第2次世界大戦開戦の1939年(昭和14年)、リトアニアの首都カウナス(当時)の日本領事館領事代理として赴任。翌1940年夏、ナチス占領下のポーランドからリトアニアに逃亡してきた大勢のユダヤ人に日本通過ビザ(査証)を発給しました。なお、カウナスでビザを得られなかったユダヤ人の多くはナチスの強制収容所で虐殺されました。

杉原千畝により命を救われたユダヤ人は約6000人といわれています。ビザの発給は本国外務省の訓令に背いた、杉原千畝個人の判断によるものでした。このため杉原氏は戦後外務省を追われることとなりました(異説もあります)。1991年(平成3年)、鈴木宗男政務次官(当時)の働きかけにより、幸子未亡人を招いて「杉原氏の行為を訓令違反としたのは誤りであった」と謝罪。この際、省内には激しい抵抗があり、鈴木次官が外務省幹部を説得するのに3日間が必要だったといわれています。

本書『六千人の命のビザ』は杉原幸子さんによる覚え書きです。誤解を招くかもしれないことを承知の上でいえば、きわめて「面白い」本です。もし、スティーブン・スピルバーグ監督によって原作に忠実に映画化されるなら、アカデミー賞の複数部門にノミネートされること間違いなしでしょう。

フィンランド、リトアニア、チェコスロバキア、ドイツ、ルーマニアと戦乱のヨーロッパ各国に赴任した外交官杉原千畝とその家族。リトアニア・カウナスでの逃亡ユダヤ人たちへのビザ発給。ドイツの敗北とともにルーマニアでソ連軍により抑留。酷寒の地をシベリア鉄道で長い長い旅の末、1947年(昭和22年)に帰国。敗戦日本で待っていた「外務省追放」。戦後の苦闘。28年の時を経て、かつての逃亡ユダヤ人たちと再会。1985年(昭和60年)イスラエルに招かれ《諸国民の中の正義の人賞(ヤド・バシェム賞)》受賞。まさに波乱万丈で感動に満ちた物語です。

なかでも唸《うな》らされたのは、大戦末期のルーマニアで幸子夫人がただ1人、進駐ドイツ軍部隊の敗走に巻き込まれ、8日間にわたってドイツ兵たちと行動をともにした事件です。ルーマニア・パルチザンとドイツ軍の激烈な戦闘。幸子さんを保護してくれたドイツ人の若い将校はこの戦いで戦死しました。誇張でも何でもなく「九死に一生」の体験です。もし映画化がなされたら、ここは全ストーリー中でももっとも印象的なシークエンスのひとつとなるでしょう。

六千人の命のビザ』のスティーブン・スピルバーグ監督による映画化。これは本気で実現を考えられてもよい事案ではないでしょうか? 杉原千畝の行跡は巨大な遺産です。 「かつてセンポ・スギハラ(杉原千畝)という日本人がいた」という事実を世界に知らしめることは、今後われわれ日本人が国際社会で生きていくうえで大いな助力となると思います。


(『六千人の命のビザ』杉原幸子、大正出版、1993)


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『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』

『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』堤未果

世界一豊かな(はずの)アメリカ合州国はこんな国です。
  • 3100万人の国民が飢えている。

  • 4500万人が医療保険に入っていない(国民健康保険制度がない)

  • 国民の8人に1人が貧困レベル以下(2人家族で年収140万円以下)の暮らし振り。

  • 貧困児童数は先進国でもっとも多い1300万人。

  • 乳児死亡数は1日あたり77人。

  • 国内に350万人のホームレスがいる(そのうち50万人が退役軍人)。

  • 国内には約2億3000万丁の銃がある。

  • 銃によって死ぬ子どもは1日平均13人。

  • 選挙では不正が横行(黒人投票者を露骨に排除など)。
アフガニスタンとイラクの戦争以来、アメリカ合州国もアメリカ人も大嫌いになりかけていた私(喜八)ですが、本書『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』を読んで考えが変わりました。これは素晴らしい本です。アメリカの「弱者」。すなわち未成年者・女性・マイノリティ・貧困者にこそ希望はあるのだと力強く伝えています。

著者の堤未果(つつみ・みか)さんは東京生まれ。ニューヨーク市立大学大学院国際関係論学科卒業後、国連、アムネスティインターナショナルニューヨーク支局局員を経て、2001年、米国野村證券に勤務中世界金融センタービルで「9・11同時テロ」に遭遇。現在は著作家・ジャーナリスト・講演通訳として活動されています。

報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』で報告されているアメリカの現実のうち、私がもっとも激しい憎悪を覚えたのは米軍のリクルート(新兵募集)活動でした。「大学に進学できる」「劣悪な環境から脱出できる」「Be What You Want to Be!(なりたいものになれ!」等々、軍のリクルーターは貧困層の若者を狙い撃ちにします。

貧しい家庭、劣悪な環境に育った若者は大学に進学するのも容易ではありません。そして学歴社会のアメリカでは大学に行けなかった者は一生のあいだ時給5ドル(あるいはそれ以下)の仕事に甘んじるしかないため、リクルーターからいいことづくめの誘いを受けて軍隊に入る若者は少なくない・・・。

けれども現実は大きく異なります。兵役を勤め上げても実際に大学に進学できる者は全体のうち35パーセント、そして卒業できるのは15パーセントにすぎません。大学に入る最初の年に前金として1200ドルを払わなければならず、また近年大学の学費が急騰しているため、中途で諦めてしまう者が多いからです。

命がけで戦う一般兵士の給料は安くて、年間1万7000ドルから多くて2万ドル。そこから学資の積立金、生命保険を天引きされる。命を守るための防弾チョッキさえローンで個人購入しなければならず、除隊した後に月賦を払っている退役兵士もいます。

高校卒業(中退)したばかりの子どもたちを殺人マシンに作りかえる軍事訓練キャンプ。いきなりアフガニスタンやイラクの戦場に送られ、精神と肉体をすり減らす毎日。運が悪ければ死亡、または一生残る障害を負う。運良く生き残れても多くの者がPTSDに苦しみます。アルコール依存症・精神病・麻薬・犯罪・・・。なのにVA(Veterans Association = 退役軍人協会)の予算は削られるいっぽう。

結局のところ軍隊とは社会の縮図、貧しい若者たちを食い尽くす巨大なマシンなのです。アメリカの「新自由主義」すなわち行き過ぎた資本主義、原理主義的資本主義の下では貧しい者・持たざる者はどこまでも食い物にされる存在でしかありません。

そんなアメリカになぜ、まだ希望があるのか?

アメリカ社会に深く組み込まれた不正と戦う「弱者」たちが存在するからです。インターネットを武器に軍のリクルート活動に反対するザック・ロンドン、タミカ・ジョンソンといった高校生たち。除隊後反戦活動を開始したマイノリティの若者イヴァン・メディナ。ブッシュ大統領に面会を要求した戦死軍人の母親シンディ・シーハン・・・。彼ら彼女らこそがアメリカに残された「希望」です。

世界最大最強の軍事力に支えられた「悪の帝国」アメリカを激しく憎むようになりかけていた私ですが、当のアメリカ市民の中にも権力者によって踏みつけにされている「弱者」が存在することを知りました。そしてその弱者たちが最後まで決して希望を捨てずに戦っている・・・。これらの事実を教えてくれた『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』著者の堤未果さんに「ありがとう」とお礼を言いたいと思います。


(『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』堤未果、海鳴社、2006)


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目取真俊氏の若者論

続 いったい、この国はどうなってしまったのか!』魚住昭・斎藤貴男・目取真俊、日本放送協会(2006)から目取真俊氏の発言を引用(97-98頁)。

★引用開始★

 教育現場で教えていてもそうなんですけど、いまどきの若いやつらは、と見下す気になれません。真面目な、素直な感性を持って、一所懸命考え、日本もこの戦争に深く関与しているんだと言っている人たちがけっこういるんですよね。少年犯罪とかイジメとか荒れている場面ばかりがマスコミに流されるものだから、若者への偏見が生まれていますが、いまの若い人たちを見ていると、むしろよくなっているんじやないかという気がします。自分の目で見て、知る機会さえ与えられれば、変わっていく可能性があるのではないか。それができずに社会の中で下層に追いやられて、なかなか浮かび上がれないから、絶望感に追い込まれて荒れていくわけです。彼らが高校、大学を出て、ちゃんと生活ができて、落ち着いて物が考えられる社会の仕組みをつくっていけば、本当はもっと戦争の問題、社会の将来に関しても、ポジティブな方向に変わる要素はあると思っています。

★引用終了★

 喜八のボヤキ「目取真俊氏の意見に賛成です。私(喜八)も『いまの若者はダメ』という意見には組しません。以前、アルバイトの労務管理をしていたことがありますが、ほとんどの若者は真面目ないい子でした。逆に我々オジサン世代のできが悪いのでは? という印象さえあります」



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